著者:斎藤陽子さん

児童・生徒の図書館利用 1997.11.18

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 土曜日の朝(アメリカでは毎週休み)、娘から「古代ローマの人々がどんな住居に住んでいたか、レポートを出すので、図書館に連れていって」と突然言われました。

 まだ車の免許証を持っていない、中学生の娘を連れて、主人も一緒に親子3人で図書館に行きます。

 資料探しをしている娘を待っている間、主人はあらゆる新聞の揃っているコーナーで、のんびりと新聞に目を通しております。私は料理の本を出してきて、サンクスギビング(感謝祭)のパーティーにお呼びするお客さんへのメニューの、レセピー探しをしております。

 この様に週末のアメリカの町立図書館には小学生から高校生まで、アサイメント(assignment問題)の資料探しの生徒とアッシー君がわりの父母のいる情景は、もっとも典型的なアメリカの生活の姿です。

 アメリカの教育と日本の教育の違いを指摘して欲しいと頼まれたら、即座に日本は詰込み暗記式教育であり、アメリカは文献研究式教育と答えています。

 早くもアメリカの小学校の3年生になると、図書館を利用する宿題が出るようになります。

 宿題は主に社会科が多く、例えばヨーロッパの5カ国の中から、自分が問題に取上げたい国を選び、2週間程かけて、レポ−トを仕上なければなりません。次の月はアジアから1カ国選んで提出し、その次は中東から1カ国と続きます。

 先生はこの社会科のプロジェクトを始める前に、レポートの書き方を懇切丁寧に児童に教えます。

 例えば、目次の作り方、アメリカからの位置、気候、風土、習慣、食生活、衣生活及び最後は参考文献を書く事までの項目に沿って、15ページほどの小誌にし、レポートとしてまとめさせる指導をします。

 子供たちはその時に初めて、百科事典の調べ方を教わり、図書館のどの辺の欄へ行くと、他国の資料が探せるかを学んだりします。この時に図書館にはとても親切な何でも指導してくれる、ライブラリアンがいる事も児童は学びます。

 このレポートの為に、また時にはまるで自分がヨーロッパへでも行くかの様に、近所の旅行社へ行って「ヨーロッパ2週間の旅」などのパンフレットをもらってきて、そのパンフレットから写真などを切り取り、レポートに貼ってゆきます。

 最近、古い婦人月刊雑誌が出てきたので、めくって見ると料理や着物のページに穴のあいているのを見て、3人の子供が「日本」についてのレポートを出す為に、切りきざんだ跡を発見して懐かしくなりました。

 ちなみに子供たちの作ったレポートを見ますと、エジプト、エクアドル、イタリ−、アイルランド、日本等とさまざまな国を調べ作成した、3人の子供達のそれぞれの小誌があります。

 思い返せば私が始めてレポ−トを書いたのは、大学に入ってからで、その時に初めて参考文献も書かなければならない事を教わった記憶があります。

 アメリカの教育は小学校3年以後大学まで、このレポートに毎日追われる教育となり、このレポートは毎回提出のたびに、成績がつけられて内申書の記録として残ります。

 この内申書の記録は、中学及び高校の時の記録が、大学入学の参考とされて合否の大きなウェイトを占めます。

 中学生、高校生たちはこの学校から出される、毎回の研究プロジェクトには力をいれており、帰宅してからの時間はレポート作成に費やします。時には、週末も仕上げに苦労したりしております。

 よく、日本の人にアメリカでは塾はないのか、との質問を受けますが、原則的には塾は無いかわりに、アメリカの生徒はこの様な宿題に時間を当てています。

 最近、日本から上陸したK塾などへ、日本へ帰国する方達の間では、子供を通わせている人もいるようですが、アメリカに住んでいる人には塾は「ゼロ」に等しいです。

 中学に入りましたら、生徒はタイプライターあるいはコンピュータで、ちゃんとまとめたレポートでないと、先生は受理してくれなくなります。

 例えば「アンネの日記」を読んで、その頃のヨーロッパについてのレポートを提出するなどと、かなり高度な内容になってきます。

 中学では大学まで通用するレポートの書き方を学びます。序文・総論・各論の後に結論を述べること、参考文献の書き方、レポート作成の仕方、などを徹底して教えられます。

 中学に入ると月に1題の割で、社会や英語(国語)のレポートの課題に追われ、そのために子供たちは沢山の本を読み、資料あさりをします。

 クラスで先生がレポートのテーマを発表すると、子ども達は我れ先にと図書館へ行きたがります。それに付き合う親も大変です。

 図書館には同じテーマの資料さがしをする友達であふれて、本が無くなるからです。こういう学校の教育法が、子供たちと図書館とのつながりを大きくし、親子で頻繁に図書館通いを促します。

 高校になると、書くことによって自分の意見を述べる訓練がなされます。

 例えば、ジョン・スタインベックについて何冊以上読み、それぞれの本の読後感をレポートせよとか、ウィリアム・シェクスピアの時代の階級性につて少なくとも彼の5冊の本を読んでレポートせよといった具合です。

 アメリカの大学生は、中学の頃からレポート作成のために、資料探しを鍛えられています。ところが、日本からの留学生は、この辺の要領が訓練されていないため、英語以前の力不足をしきりに嘆く学生も多いです。

 アメリカの大学生の文献資料の探し方のうまさ、本を破読する速さ、まとめる上手さ、気の利いた題名の付け方、なにを取っても年期が入っております。

 また、変ったところでは、大学の物理、化学、などを専攻している学生は、科学レポートの書き方が必須単位となっています。

 卒業までに取らなくてはなりませんが、その授業を受持つ教師は大学の教授ではなく、一流科学企業の技術部長など、会社の製品の広報に携った幹部などが、大学に来て教えます。

 例えば、「技術的仕様書の書き方」、「技術企画提案書の書き方」等を指導します。これなどは、速戦的な生きた教育と感心させられます。

 アメリカの大学には、「図書館学」なる独立した学問があります。そのため、大学の構内には、幾つもの図書館があります。

 例えば、文科系の学部用には文科のみの6階建ほどの図書館、自然科学には自然科学のみの図書館、芸術や体育はその専門の図書館、……それぞれの科に大きな図書館が大学構内にあるのは豪華です。

 私自身、高校時代は小説読みたさに、高校の図書館の小説欄は片っ端から破読しました。が、勉強の資料集めのために図書館を使った記憶はありません。

 大学でも静かな所が欲しい目的で、試験期間だけ図書館を使った記憶はありますが、資料集めのために使用した記憶はありません。まことにお粗末な、恥かしい図書館利用の記憶です。

 日本の学校教育では、図書館利用の宿題が出ません。だから図書館利用の記憶が、私に乏しい原因なのだと思います。根本的に、日本とアメリカの教育方法の違いを見る思いがします。

 このアメリカ式教育法は、取りも直さず「学問の魅力」を知らせてくれる教育に思えます。

 自分で調べる要領方法、巾の広い多角的な知識の収集法、知識の深さの魅力の発見、考える力と応用力の開発など、日本の記憶式暗記教育では得ることができません。

 中学生、高校生も大学生は勿論のこと、生き生きと楽しそうに、自分のペースで学問をしている姿を見かけます。

 それは取りも直さず、社会に出て応用の利く人材、即戦力のある人材育成をめざした、現実的で柔軟性のある教育といえます。

 それに反し機械的に詰め込み一辺倒の日本の教育は、学問の魅力を知るチャンスを削ぎ、利用と応用をさせない暗記のみに追われた学問です。目標は、一路「受験」のため。それが日本の教育路線のように思えてくるのです。

 小学校からどの学校内にも、図書館が設置されていますが、在庫本に限りがありますので、児童生徒は町立図書館をよく利用します

 お父さんなども「車の修理のし方」等の本が必要な場合には、本屋で買い求める前に図書館へ行きます。

 図書貸し出しカードは、住人である証明を持って行くと、すぐに作ってくれます。 町立図書館はあらゆる本の他に、優良映画ビデオ、CDの貸し出しもしております。

 また、午前中は保育児童のための人形劇などが催されたり、児童に本を読んで聞かせるプログラムなどもあります。おばあちゃんなどの引退者が奉仕活動として行っており、いろんな年齢層が図書館に出入していて、とても家庭的な雰囲気を作っております。

 図書館のショーウインドーには、珍しい国の紹介展示物を飾ってあったり、民族衣装や什器などの展示物で飾っってあったり、趣味のコレクションの紹介がしてあったり、……月々飾りを変えて、地域の人々との結びつきを重んじております。

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(*^_^*) 今回の学習指導要領改訂により、「総合的な学習の時間」が設置されたわけですが、アメリカの学校教育をお手本にしたのかな? 斎籐さんのエッセイを読みながら、自然にそういう思いがよぎりました。

 まさに「学校図書館」を学校の中心に据えたアメリカの学校教育。一方、戦後、アメリカ教育視察団が日本の学校を視察して驚いた(=学校に図書館がない!)という話。そして、視察団が下した命令、「学校には図書館を設けなさい!」。

 でも、不思議なもんですね。アメリカやイギリスでは、逆に、日本の学校教育に学んで教育課程を編成する方向にあるとか、・・・。生活規律立て直しのため、アメリカでは自由服から制服に変更する州もあるそうです。

 総合学習の意義・意図は、斎籐さんが事実に基づいて書いておられるとおりだと、私も認識しているところです。

 受験が終わっても、学校を卒業しても、先生がそばに付いていなくても、自らの意志と力で生涯学び続ける。そういう、生涯学習を念頭に置いての一大改革だと評価しています。

 ただ、寺子屋時代から、日本が長い時間かけて築きあげてきた学校教育を忘れてはいけません。不易を否定するところから始めた教育は、必ず行き詰まると思います。

 日本の津々浦々で学ぶ子ども達。各学校の裁量権が増えただけ、学校教育の質と量に格差が出てきているようです。

 また、小・中学校では「調べ学習」の方へベクトルが動いているのに、高校入試・センター試験のベクトルは依然として知識・理解中心のまま、・・・。混乱し、困惑し、苦悩しているのは、真摯な学校の先生たち、・・・。

 これを受け、昨年1月、文部科学省は、確かな学力の向上のための2002アピール「学びのすすめ」(=下に資料)を発表しました。その後も、基礎学力に視点を置いた提言を続けてきています。

 最近では、「文科相の諮問機関である文化審議会・国語教育等小委員会は7月25日,小学校の国語の時間を大幅に増やし,逆に高校の国語を選択科目中心にするなどの国語教育への意見書をまとめ」ました。

(^^)/ 国語教育への意見書 

 ごめんなさい、せっかくの斎籐さんのエッセイを乱す方向になってしまいましたね。

 いずれにしても、学校図書館・公立図書館をめぐる歴史と伝統が、アメリカと日本とでは決定的に違っている。そういう感想を抱きました。とともに、今の日本の大きなうねり(=学校図書館の活性化・児童生徒の読書生活の向上)を大事にしないといけない。そういう思いを改めて強くしました。



参考資料


平成14年1月17日
文   部   科   学   省

確かな学力の向上のための2002アピール
「学びのすすめ」

   本年4月から、全国の小・中学校で、新しい学習指導要領が全面実施されます。

   新しい学習指導要領は、基礎・基本を確実に身に付け、それを基に、自分で課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力や、豊かな人間性、健康と体力などの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとしています。

   文部科学省としては、「心の教育」の充実と「確かな学力」の向上とが教育改革の特に重要なポイントであり、とりわけ、今の学校教育における大きな課題であると考えております。

 各学校及び教育委員会においては、これまで、新しい学習指導要領の全面実施に向けて精力的に準備を進めていただいているところであり、文部科学省としても、各学校や教育委員会の取組を支援する観点から、各種の施策を講じてまいりました。

   一方で、授業時数や教育内容の削減によって児童生徒の学力が低下するのではないかという点について社会の各方面から寄せられている懸念に対しては、新しい学習指導要領のねらいとその実現のための施策とを今一度明確に示すとともに、そのねらいが確実に実現されるよう、さらに努力する必要があると考えます。

 新しい世紀を迎え、これからの日本と世界は様々な面でこれまで以上に激しい変化に直面することになると予想されます。

 そのような中で、これからの社会を担う児童生徒が主体的、創造的に生きていくため、一人一人の児童生徒に「確かな学力」を身に付けることが重要となると考えます。

   こうした観点から、新しい学習指導要領では、教育内容の厳選を図った上で、繰り返し指導や体験的・問題解決的な学習などのきめ細かな教育活動を展開することによって、そのねらいを実現しようとしているところです。

 中・高等学校においては、選択学習の幅を拡大し、一人一人の個性や能力、進路希望等に応じた学習が大幅にできるようにしました。

 さらに、自ら学び考える力、学び方やものの考え方、問題の解決や探究に主体的・創造的に取り組む態度などを育成することをねらいとして、総合的な学習の時間を新設したところです。

   諸外国に目を向けると、アメリカ、イギリス、フランスをはじめとする欧米諸国やアジアの国々などにおいても、教育こそが一国の未来にとっての最重要課題であるとして、国を挙げて児童生徒の学力の向上等に向けた教育改革が推進されているところです。

   また、昨年12月に公表された、経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査(PISA)」の結果によると、我が国の児童生徒の学力は、単なる知識の量だけでなくそれを活かして実生活上での課題を解決する能力についても国際的に見て上位に位置していることが明らかになりました。

 その一方で、我が国の生徒の「宿題や自分の勉強をする時間」は参加国中最低であること、最も高いレベルの読解力を有する我が国の生徒の割合はOECD平均と同程度にとどまっていることなどの結果も出ています。

   これらは、これまでの我が国の初等中等教育において、知識や技能だけでなく、思考力、判断力などまで含めた学力の育成に向けて取り組んできたことの成果の現れであるとともに、学びへの意欲や学ぶ習慣を十分身に付ける、あるいは、一人一人の個性や能力を最大限に伸ばしていくといった課題を示すものであると考えます。

 このような課題については真摯に受け止め、改善に向けた努力を惜しんではなりません。

   以上を踏まえ、新しい学習指導要領の全面実施を目前に控えた今、文部科学省としては、新しい学習指導要領のねらいとする「確かな学力」の向上のために、指導に当たっての重点等を明らかにした5つの方策を次のとおりお示しすることとしました。
   
   各学校においては、この趣旨をご理解いただき、各学校段階の特性や学校・地域の実態を踏まえ、新しい学習指導要領のねらいとする「確かな学力」の向上に向けて、創意工夫を活かした取組を着実に進めていただきたいと思います。

   また、各教育委員会においては、このための各種の支援策を講ずるとともに、各学校に対する適切な指導・助言を行っていただきますようお願いします。

1   きめ細かな指導で、基礎・基本や自ら学び自ら考える力を身に付ける
          少人数授業・習熟度別指導など、個に応じたきめ細かな指導の実施を推進し、基礎・基本の確実な定着や自ら学び自ら考える力の育成を図る
2   発展的な学習で、一人一人の個性等に応じて子どもの力をより伸ばす
          学習指導要領は最低基準であり、理解の進んでいる子どもは、発展的な学習で力をより伸ばす
3   学ぶことの楽しさを体験させ、学習意欲を高める
          総合的な学習の時間などを通じ、子どもたちが学ぶ楽しさを実感できる学校づくりを進め、将来、子どもたちが新たな課題に創造的に取り組む力と意欲を身に付ける
4   学びの機会を充実し、学ぶ習慣を身に付ける
          放課後の時間などを活用した補充的な学習や朝の読書などを推奨・支援するとともに、適切な宿題や課題など家庭における学習の充実を図ることにより、子どもたちが学ぶ習慣を身に付ける
5   確かな学力の向上のための特色ある学校づくりを推進する
          学力向上フロンティア事業などにより、確かな学力の向上のための特色ある学校づくりを推進し、その成果を適切に評価する
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